用語解説シリーズ 36回目 「特定の相手方」と「通信の相手方」
無線局免許状では「通信の相手方」の欄で「通信の相手」を指定しています。
アマチュア局は「アマチュア局」と指定していますが、
「特定のアマチュア局を指定している」のでは無く、
「全世界の不特定多数のアマチュア局」が相手とされています。
各種業務無線、簡易業務無線は、その業務を遂行するに必要な範囲が相手ですから、
基本的に「免許人所属の同一目的の無線局」が通信の相手です。
この場合は通信の相手を「同一免許人の無線局」と範囲を狭く特定しています。
たとえば、運送事業者ならば同じ運送事業者内、警備業なら同じ警備業会社内です。
業務上無線局が必要な事業の場合は、その事業を遂行するに必要な範囲で通信が
できればよいので、同一事業者内でのみ通信ができれば良いのです。
各種業務無線の場合は、必要に応じて通信の相手の無線局をピンポイントで
特定する場合も有ります。
たとえば 放送局の「演奏所」と「送信所」の間を結ぶ中継無線局であるとか、
人工衛星向けの地上局の場合には
「通信の相手方の無線局の識別信号を指定して特定する」場合が有ります。
最近流行の「デジタル簡易業務無線」には「登録型」と「免許型」があります。
免許型の場合の通信の相手は「免許人所属の(デジタル)簡易無線局」
ですので、他の免許人の「免許型デジタル簡易無線局」との交信はできません。
(電波法第五十二条や電波法第七十四条が適用できる場合を除く)
登録型の場合は「同一登録人所属の同一種別の無線局」以外に
「同一周波数帯を使用する登録型デジタル簡易無線局」を相手にすることが
認められているので、不特定多数の同一種の無線局との交信が認められています。
ここで、気をつけなければならないのは電波法第五十九条は「秘密の保護」です。
この規定をアマチュア局にも厳格に適用した場合は、
以下の行為は電波法第五十九条違反行為になります。
理由は「通信の存在もしくは内容を漏らした」に抵触するからです。
1 いわゆる珍局が出ている周波数、電波型式等のTwitter、パケットクラスター等での
リアルタイムでの公開。 珍局に限らずEsやScで聞こえる局、
現に運用されているアマチュア局等の情報も含みます。
「存在を漏らした」に該当します。
2 アマチュア無線関連メディア(紙、インターネット等 手段を問わず)への交信
レポートの投稿、および掲載の禁止。
たとえばCQ hamradio誌やファイブナイン誌への「近着QSLカード」やDXレポートの
類いの禁止。DXクラブ等での機関誌への投稿も禁止。
「存在を漏らした」に該当します。
3 1,2に関わらず、手段の如何を問わず交信ログの第三者への公開禁止。
たとえば、いわゆるコンテストログの提出、アワードの申請など、
交信記録を公開する行為の全てを禁止
「通信の存在と通信内容の両方を漏らした」に該当します。
4 いわゆるQSLカード類の一切の交換禁止。
特にビューロー経由の場合は、仕分け人に交信データを見られるのはNG。
eQSLの類いであっても サーバーメンテナンス時などに、第三者がデータを見る
可能性があるので一切禁止。
「通信の存在と通信内容の両方を漏らした」に該当します。
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例をいくつか挙げましたが、要は電波法第五十九条をアマチュア局に超厳格に適用すれば、
「他者への「聞こえているアマチュア局の情報」「自身が行った通信の記録」の公開は一切禁止」
なのです。ところが、アマチュア局は、国際法上の定義、国内法上の定義を踏まえれば
どこのアマチュア局が聞こえていたか、どこのアマチュア局と交信ができたか
という情報をアマチュア局免許人間で共有することは「無線技術に関する技術的研究」の
ためには有用な情報であることと、
アマチュア局の設備には秘匿性が認められていない(無線設備規則第十八条第2項)
アマチュア局の通信には暗語の使用が認められていない(電波法第五十八条)
コンテストを「交信技術を競う」、アワードを「交信するための技術研鑽の結果」と考えれば
コンテスト主催者やアワード発行者への交信データの公開は不可欠である。
と解釈されるので、
「アマチュア局の通信は他の無線局および受信設備、特に他のアマチュア局に
受信されても(聞かれても)問題が無いものであること」
「アマチュア局の通信内容を「通信の秘密の保護」の対象にするのは、アマチュア局の
目的を鑑みれば不適当である」
とされています。
すなわち、『電波法第五十九条のいう「特定の相手方」にはアマチュア局は含まれない。』
とされています。(国際的な認識です)
現に、その観点で記載されたアマチュア無線関連書籍も何点か存在します。
秘密の保護については別項で改めて解説します。
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